「乳酸は疲労の原因?」

乳酸とは、身体活動に必要なエネルギー(ATP)を作る際に、糖を分解することできる生化学物のことです。短距離走や筋力トレーニングなど、短時間で高強度の運動では乳酸が血中に多く分泌します。以前はこの乳酸が、疲労物質のひとつとして考えられており、運動生理学の分野では、血中乳酸の早期除去に関する多くの研究がなされてきました。しかし、現在では、乳酸は再利用可能な身体エネルギーとの認識がされています。乳酸は酸化基質であり、ミトコンドリアを介在し糖分解の過程でエネルギー源として再利用されます。

乳酸は身体活動のエネルギー

ご存知の通り、筋肉には、速筋線維と遅筋線維という2タイプの異なる筋線維が存在します。速筋線維にはミトコンドリアが少なく、遅筋線維にはミトコンドリアが多く存在します。高強度の運動では、まず速筋線維中のATPが速やかに使用され、時間が経つにつれて糖を分解してATPと乳酸が生成されます。その乳酸は血液によってミトコンドリアが多い遅筋線維でエネルギーとして再利用されます。また、乳酸は心臓の筋肉や脳のエネルギー源としても使われることがわかっています。このように乳酸は、筋活動によって生成されても、ある程度一定に保たれます。したがって、かなり激しい運動を繰り返し行わなければ、乳酸値は上昇しません。このことからもわかるとおり、日常生活で感じる肩こりや疲労感は、乳酸が原因であるとは考えられません。日常生活での活動程度であれば、血中乳酸濃度は、ほぼ一定であり、仕事で多少筋肉を酷使したとしても、30分程度休憩すれば元の状態に戻ります。

乳酸はトレーニングに活用できる!

疲労は多様な要素が重なって生じるのであり、乳酸値の上昇が原因ではありません。加えて、乳酸は運動後に起こる筋肉痛や筋肉の張りの原因でもありません。乳酸は、上手に活用すれば有酸素能力や筋持久力の向上の指標として役立ちます。実際、陸上競技や水泳競技のトップアスリートなどは、トレーニングの中で上手に乳酸値を測定して、競技力向上に活用しています。